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建築工法
いわゆる森林鉄道とは、森林資源を採掘して敷設された産業鉄道、或いは途中の森林景観を主要な観光資源とするものを指します。阿里山森林鉄道は、単なる森林鉄道ではなく、登山鉄道、高山鉄道でもあります。
   
世界の登山鉄道によく見られる5種類の基本工法
  一般的に、傾斜度による走行抵抗の問題を克服しようとする場合、傾斜度と湾曲度の地形の障害を乗り越え、また、路線敷設のコストを下げるため、まず車両 (Rolling Stock) の構造上に特殊な設計と調整を施します。そして、車両構造で克服できない部分は、線路の敷設方法を工夫して地形の変化に対応し、過度な傾斜度と湾曲度にならないよう対応します。 19世紀の登山鉄道の建設において、車両の馬力には限界があり、列車は山を越え谷を越えなければならなかったため、よく見られる以下の5大工法を発展させました。
(一)S type line and U-turn line S型ラインと180度のUターンライン
(二) Loop line and Spiral routeループ型ラインと螺旋型ライン
(三) Rack railway (Cog rail) ラック式登山鉄道
(四) Switch back (Zig Zag) スイッチバックライン
(五) Special engine(Locomotive) 特殊設計の登山列車
   
阿里山森林鉄道が備える登山鉄道の5大工法のうちの4つ
  S型路線と180度のUターン路線 レールの傾斜度を抑えるため、登山鉄道は直線的に線路を敷かず、谷または、溪流の間に延々と線路を延ばし、180度のUターンを描くように敷設、大回りさせる事で海抜高度差をかせぎます、別名Ωループ (オメガループ)とも呼ばれます。これは世界の登山鉄道で地域を問わずよく見られる工法です。

阿里山森林鉄道は、17.1kmの竹崎-木履寮間のUターンで、典型的なUターンラインを見ることができます。
   
ループ型路線と螺旋型路線
  登山鉄道では高度差の大きな地点でループ型や螺旋型に線路を敷設し、ぐるぐると何周も回って、海抜高度を上げて行きます。ラインが円心を1周するものをループライン、同円心を何周も回る、或いは不規則に異なる円心を回るものをスパイラルルート(またはスパイラルループ) といいます。 阿里山森林鉄道は、独立山の螺旋区間(独立山スパイラル)により、列車が異なる高度で3回現れる様子を見ることができます。
   
スイッチバックライン
  列車が坂を上る際、レールの傾斜度を抑えるため、狭い地形の場所では、SタイプラインとUターンラインは使用できません。ループラインとスパイラルルートもまた、狭い地形では連続して敷設することができません。こういった場合は線路をZ型にジグザグに敷設して方向を変えながら一進一退するしかなく、階段を上るように山を登ることで(スイッチバック)、海抜高度を上げます。一般的に、スイッチバックラインは、輸送量(連結できる車両の数)と走行速度に大きな影響を与えるため、地形的にやむを得ない箇所にのみ設置されます。 阿里山森林鉄道のスイッチバックラインは、台湾で最もポピュラーで、列車が最初のスイッチバックラインを通過する際、列車は右側から上がり、左側から折り返して山を登ります。
   
特殊設計の登山列車
  登山鉄道や森林鉄道の中には、険しい勾配や連続する急カーブで、早期の蒸気機関車時代は、通常の平地で用いる車両では適応できなかったため、特殊な設計の列車が開発されました。これらの列車の大部分が使用されたのは20世紀までで、近代化により高性能のディーゼル動力化、さらには電気化されたため、現在は大部分が淘汰されました。しかし、今日も運行しており、大半が鉄道文化財の保存を基本として、再び運行しています。
   
阿里山森林鉄道の価値
  阿里山鉄道は、最も複雑な多様性を持ち、森林鉄道、登山鉄道、高山鉄道を一身に集めています。歯軌(アプト式鉄道)が無い以外は、スイッチバック、スパイラル(螺旋登山)、オメガループ、特殊タイプの蒸気機関車(シェイ歯車式直立シリンダー)等、なんでもありです。言い換えれば、阿里山鉄道の技術の多様性こそ、阿里山鉄道が今後世界遺産に加わる重要な足がかりなのです。
阿里山鉄道は、762mmの狭軌に属し、祝山駅は海抜2451mにあり、インドのダージリン・ヒマラヤ鉄道(600mm狭軌)、最高地点Ghum の2257mを超え、アジアで最も高い狭軌登山鉄道です。また、現在運営している鉄道で言えば、阿里山鉄道は恐らく海抜2451m、世界最高の762mm狭軌登山鉄道です。
「海抜落差」は、登山鉄道が登る垂直高度を象徴し、天に通じるエレベーターのような登山鉄道では、この路線の最高点と最低点の差から海抜落差が生まれます。世界で有名な登山鉄道の非歯軌タイプでは、 世界遺産であるインドのダージリン・ヒマラヤ鉄道の海抜落差2144mですら、阿里山鉄道の持つ海抜落差2421mに及ばず、海抜落差世界最大の762mm狭軌登山鉄道となっています。 「路線傾斜度」は、登山鉄道にとって、登山の困難さと危険性を象徴し、まるで車を押して坂道を上るように、傾斜度が大きくなればなるほど危険でありながら、列車の登山効率は上がります。阿里山鉄道は、世界の非歯軌、非電気化の狭軌体系の中で、傾斜度が最も急な762mmの狭軌登山鉄道です。
   
  資料元:阿里山森林鉄道百年紀実—蘇昭旭著